ここ数年、東京の都心部のマンション価格は急騰を続け、高騰する住宅価格に一般の日本人は手が届かなくなっている。日本の不動産専門家である牧野知弘氏は、近年ますます多くの外国の富豪たちが東京の高層タワーマンションを「海外の別荘」として購入していると指摘する。しかし、これらの物件は訪日時に短期間使用されるだけであり、最終的には長期にわたって空き部屋となっている現状がある。
「激安価格」の日本豪華物件に中国買い手が殺到
最近、東京都心部の高級タワーマンションでは外国人の購入者が急増している。世界的な経済成長とインフレの影響で物価が高騰する中、例えば上海や北京では一般市民が購入するマンションの価格が一般的に3億~4億円(1500~2000万元)に達している。こうした中国の買い手にとって、日本の不動産価格は「掘り出し物」レベルに映る。高層マンションの価格が国内の普通住宅並みに感じられるため、現金一括払いで購入する人も少なくなく、「これはまさに天国だ」と考える人が多い。
日本が長年続けてきた低金利政策により円安が進行し、外国人から見れば日本の物価は「信じられないほど安く」なっている。これはかつて円相場が70円台だった時代に、日本人観光客が海外で「何もかもが安い」と感じた状況と正反対の現象だ。
「別荘代わり」東京に「第二の家」
これらの外国人が購入する主な理由は、日本旅行時の「拠点」としての利用だ。現在、日本を訪れる東アジアの観光客の多くは「初来日」ではなく、すでに何度も訪れた「リピーター」が主流となっている。2019年の観光庁データによれば、香港からの観光客の約9割が複数回の来日経験者で、3割は10回以上訪日していた。彼らにとって日本旅行は国内旅行のようなもので、毎回ホテルを予約するより物件を購入した方が便利で経済的と考えられている。
しかし、こうした高級物件の多くは最終的に空き家化している。日本人が別荘を購入後、最初は張り切って通うものの次第に足が遠のく現象と似ている。香港の富豪が東京・港区に2億円で購入したマンションは、過去2年間一度も使用されていない。部屋にはほとんど家具がなく、寝室にはベッドが1つ置かれているだけで、上にはブランドバッグが無造作に置かれ、クローゼットは空っぽだ。賃貸に出そうとしたが月100万円の提示価格では需要がなく、60万円まで下げてもオーナーが折れず、結局空室が続いている。
さらに、こうした物件は売却も難しく、華人コミュニティでは「日本の高級物件は売れない」という噂が広がり、買い手の観望ムードが強まっている。一部のオーナーは観光客や華人居住者への短期賃貸を試みるが、管理トラブルが発生し、建物全体の治安悪化を招くケースも。言語の壁やルール理解の違いから、外国人のオーナーが管理を放置する事例が増え、都心高級マンションの環境が徐々に悪化しつつある。
多くの外国人オーナーにとって頭痛の種となっているのは、購入後の毎月の管理費と修繕積立金だ。日本に居住していなくても支払い義務が発生する。特に「修繕積立金」という前払い式の制度への理解が進んでいない。公共施設の維持管理が必要なことは理解しても、実際に修繕が必要になる時ではなく前もって積み立てる仕組みに違和感を抱く。日本人は修学旅行の積立金など「分割積立」の文化に慣れているが、こうした貯蓄習慣に乏しい外国人からは「不合理な資金管理」と批判される。
さらに投資家が不満を募らせるのは、この積立金が売却時に返金されない点だ。つまり「次のオーナーのために貯金している」状態となる。3~5年で転売を計画する外国投資家にとって、この費用は完全に「無駄金」と映る。このため多くの外国オーナーが費用の支払いを拒否し、物件を放棄するケースが増加している。
外国人オーナーだけでなく、日本の相続人も同様の問題に直面している。現在、古いマンションのオーナーが亡くなった後、相続人が物件を引き継ぐケースが増えている。しかし相続人には既に自宅があり、特に郊外で賃貸・売却が難しい古いマンションには関心が薄い。都心部で高値での売却や賃貸が可能な物件なら良いが、古いマンションの場合は「厄介な負動産」となる。相続後も毎月の管理費・修繕積立金が発生し続けるからだ。一戸建てなら管理費は不要で、維持費だけがかかる。
管理費と修繕積立金は空室でも支払いが止まらない。古いマンションの場合、修繕積立金が月3~4万円、管理費と合わせると5万円近くになる。固定資産税と都市計画税を加えると、使用しない相続マンションの年間維持費は数十万円に達する。こうした経済的負担から、多くの相続人が「連絡不能」状態を選んでいる。居住も賃貸もせず、管理組合への相続届けも出さないのだ。
例えば介護施設に入所していた高齢女性が亡くなり、マンションが長期空室になった事例がある。ある月から管理費の自動引き落としが停止し、管理会社が死亡と銀行口座凍結を確認したが、相続人は現れず費用は未納のまま。当初登録の緊急連絡先は転居し電話も不通で、管理会社は「所有者不明のまま徴収不能」というジレンマに陥った。
このような状況を背景に、日本のマンション管理制度は重大な課題に直面しており、今後ますます「放棄物件」が増加する可能性が懸念されている。